リンパ腫の概要

 リンパ腫(悪性リンパ腫、リンパ肉腫)は、リンパ球を起源とする腫瘍で、多様なグループに分かれます。リンパ節、脾臓、骨髄などのリンパ組織で発生することが多いですが、体のどこの組織においても発生する可能性があります。リンパ腫は、最も一般的な犬の腫瘍の一つで、年間の発生率は、およそ10万頭に13~114頭と見積もられています。リンパ腫は、全ての犬の全腫瘍のうち、7-24%を占め、犬の血液腫瘍のうち、83%を占めると報告されています。主に中齢以上での発生が多いですが、T細胞性リンパ腫は、それより若い年齢で発生する傾向があります。

好発犬種

ボクサー、ブルマスティフ、バセットハウンド、セントバーナード、スコティッシュテリア、エアデールテリア、ピットブル、ブリアード、アイリッシュセッター、ロットワイラー、ブルドッグ

※低リスクの犬種→ダックスフンド、ポメラニアン

病因(省略)

分類と病理学

犬のリンパ腫の分類は、解剖学的部位、組織学的基準、免疫表現型によって行われます。

最も一般的な解剖学的位置によるリンパ腫の分類は、発生頻度の順に以下になります。

多中心型リンパ腫 (Multicentric)

リンパ腫の犬の80%以上は、多中心型リンパ腫です。多中心型リンパ腫は、抹消のリンパ節腫大が特徴づけられます。

消化器型リンパ腫 (Gastrointestinal; GI)

消化器系でのリンパ腫の発生は、多中心型リンパ腫と比べると低く、犬の全リンパ腫のうち5-7%を占めます。

縦隔型 (Mediastinal)

皮膚型 (Cutaneous)

皮膚型のリンパ腫は、孤立性 (solitary)と多発性のどちらのパターンもあります。組織で分類すると、上皮向性 (epitheliotropic)と非上皮向性 (non-epitheliotropic)に分けられます。

上皮向性リンパ腫 (epitheliotropic, mycosis fungoides)

犬の上皮向性リンパ腫は、人と同様でT細胞由来であるといわれています。主にCD8+T細胞由来であることが多いようですが、人ではCD4+T細胞由来であることが一般的なようです。

非上皮向性リンパ腫 (Nonepitheliotropic)

犬非上皮向性リンパ腫は、単一もしくは多発性に、皮膚もしくはに表皮 (epidermis)もしくは真皮乳頭 (papillary dermis)に、結節性もしくは斑状に発生します。組織学的には、非上皮向性リンパ腫は、表皮 (epidermis)と真皮乳頭 (papillary dermis)を分け、真皮及び皮下組織の中間から深い部位に発生します。

その他の部位に発生するリンパ腫

リンパ組織以外のいかなる部位でもリンパ腫は発生する可能性があり、眼、皮膚、中枢神経系(CNS)、骨髄、膀胱、心臓、鼻腔などでも発生します。

リンパ腫の組織学的分類

びまん性大細胞性リンパ腫 (DLBCL, Diffuse large B-cell lymphoma)

WHOの臨床ステージ分類

解剖学的部位

A. 全身型
B. 消化器型
C. 胸腺型
D. 皮膚型
E. 白血病 (血液と骨髄のみ)
F. その他 (腎臓リンパ腫など)

ステージ

I. 単一のリンパ節もしくは単一組織におけるリンパ組織に限局
II. 領域リンパ節(複数)(±扁桃)
III. 全身性のリンパ節
IV. 肝臓 and/or 脾臓 (±ステージIII)
V. 血液中での出現と骨髄 and/or 他の臓器浸潤 (±ステージⅣ)

サブステージ

a. 全身症状あり
b. 全身症状なし

予後について

T細胞性のリンパ腫は悪い!

CHOP-basedの多剤療法プロトコルで予後を比較したところ、T細胞性(CD3陽性)のリンパ腫の方が予後が悪いということが報告されています。
生存期間の中央値は、T細胞性:159日、B細胞性:389日です。欧米では、TerribleのT細胞性、BadなB細胞性と覚えているようです。

サブステージb(症状あり)の方が予後は悪い!

リンパ腫は、通常のStage分類に加え、臨床徴候の有無によって、サブステージ “a”と”b”に分けられます。サブステージaが臨床徴候なし、サブステージbが臨床徴候ありとなっており、生存期間の中央値は、サブステージaが345日、サブステージbが44日と報告されています。