この記事を読んだ方が良い方

  • 犬の口腔腫瘍について全く知らない方
  • 犬の口腔腫瘍で有名な4つをすぐに挙げられない方
  • 犬の口腔腫瘍で有名な4つの違いを知りたい方

臨床でしばしばみられる犬の口腔腫瘍。獣医師の皆さんは、犬の口腔腫瘍で有名な4つの腫瘍挙げられますか?もし挙げられたとしたら、どの腫瘍がどのくらいの頻度で起こるのか、それぞれの臨床挙動(リンパ節転移率や遠隔転移率)、治療法の選択、予後などを知っていますか?この記事では、犬の口腔腫瘍の概要と発生頻度が多い4つの腫瘍の違いについて主に解説します。各腫瘍ごとの解説は別のページで解説します。

犬の口腔腫瘍の概要、発生頻度の高い4つの腫瘍とは?

犬の口腔腫瘍は、比較的よくみられる腫瘍で、全腫瘍のうち3-12%を占めるといわれています。犬の口腔腫瘍で絶対に押さえておきたい4つの腫瘍は、悪性黒色腫(MM)、扁平上皮癌(SCC)、線維肉腫、棘細胞性エナメル上皮腫の4つです。報告によってばらつきがあるようですが、発生頻度の多い順に、悪性黒色腫>扁平上皮癌≧線維肉腫>棘細胞性エナメル上皮腫となるようです。

※上記4つの他にも犬の口腔に発生し得る腫瘍は、骨肉腫 (OSA)、軟骨肉腫、未分化肉腫、多小葉性骨軟骨肉腫(multilobular osteochondrosarcoma: MLO)、骨内癌、粘液肉腫、血管肉腫、リンパ腫、肥満細胞腫、可移植性性器腫瘍なども発生すると報告がありますが、上記の4つの腫瘍をしっかりと理解することが大事です。押さえておくべき4つの腫瘍と比べて何かがちがうぞ?と思ったら、その他の腫瘍の可能性を考えればよいと思います。

押さえておくべき4つの腫瘍

  • 悪性黒色腫
  • 扁平上皮癌
  • 線維肉腫
  • 棘細胞性エナメル上皮腫

犬の口腔腫瘍のSummary

おそらく臨床医の皆さんに使えるかもしれない表を、Withlow & MacEwen’s small animal CLINICAL ONCOLOGY (sixth edition)をもとに作成いたしました。

David M. Vail et al., 2019., Withrow & MacEwen’s small animal CLINICAL ONCOLOGY sixth edition: p433 Table 23.1を参考に作成

以下は、簡単に各腫瘍の解説をしていますが、後々各腫瘍ごとのページを作成する予定です。

犬の悪性黒色腫(メラノーマ)

 犬の悪性黒色腫は、他の犬の口腔腫瘍と比べると、小さいサイズの犬で発生する傾向があるようです。発生する部位は、歯肉粘膜、頬粘膜、口唇粘膜が多くあります。悪性黒色腫といえば、メラノサイト由来の腫瘍ですので、顆粒を持ち、見た目上も黒色の見た目をするイメージがあると思いますが、実際には顆粒のある悪性黒色腫は2/3で、無顆粒性の悪性黒色腫も1/3と比較的多くみられます。そのため、口腔の腫瘍を見て色素がないから悪性黒色腫ではない可能性が高いと飼い主さんに伝えることは避けた方が良いでしょう。

 悪性黒色腫の予後は、犬の口腔腫瘍の中でも最も悪いです。リンパ節転移や遠隔転移がしばしばみられる腫瘍です。外科手術単独での1年生存率は、21-35%、放射線治療単独での1年生存率は、36-71%です。

犬の扁平上皮癌

犬の扁平上皮癌は、犬の口腔腫瘍のうち、2番目に多い腫瘍です。扁桃以外に発生した扁平上皮癌は、転移率は5-29%といわれておりますが、転移率は発生部位に依存するようです。吻側にできた扁平上皮癌は転移率が低く、尾側の舌もしくは扁桃に発生した扁平上皮癌は転移率が高いそうです。

犬の線維肉腫

犬の線維肉腫は、犬の口腔腫瘍のうち、3番目に多い腫瘍です。大型犬で発生が多い傾向にあり、好発犬種にはゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーなどがあります。

犬の線維肉腫は、組織学的に良性の見た目をしていることがあり、大きな組織サンプルであっても病理医が良性か低グレードの線維肉腫かの判断が困難な場合があるようです。このような扁平上皮癌を、histologically low-grade but biologically hig-grade FSAと呼び、大型犬の硬口蓋もしくは上顎歯列の犬歯から臼歯の間で発生することが多いようです。そのため、病理結果が線維種や低グレードの線維肉腫と診断された場合でも、積極的な治療が必要となる可能性を頭に入れる必要があり、急速に成長したり再発した場合、骨浸潤が見られる場合には積極的な治療が推奨されます。

犬の棘細胞性エナメル上皮腫

犬の棘細胞性エナメル上皮腫は良性腫瘍に分類されますが、局所での挙動は悪く、しばしば下顎や上顎の骨を浸潤します。中型から大型犬での発生が一般的で、シェットランド・シープドッグやオールド・イングリッシュ・シープドッグ、ゴールデンレトリーバーが好発犬種として挙げられます。

吻側の下顎が最も発生が多く、51%の症例でこの部位にできるそうです。他の部位では尾側の下顎が22%、吻側の上顎が22%、尾側の上顎が6%と続きます。転移はしません。

参考文献

  1. Withrow & MacEwen’s Small Animal Clinical Oncology. St. Louis, Mo. :Saunders Elsevier, 2007.