前立腺膿瘍




前立腺膿瘍の定義

 「前立腺肥大に伴って生じた嚢胞内に、膿液を多量に貯留したもの (prostatic abscess)」

前立腺膿瘍の病態生理

  • 細菌感染による前立腺の炎症が進行して化膿性前立腺炎を起こし、生じた膿液が嚢胞腔内に貯留
  • 膿液の貯留が増すに従い、膿瘍は大きくなる

前立腺膿瘍の臨床徴候

  • 疼痛を伴うため、歩行を嫌い、元気・食欲は低下
  • 発熱する例もみられる

前立腺膿瘍の診断

  • X線検査:前立腺の大きさを知るとともに、前立腺が直腸を圧迫しているかを確認
  ※尿道への造影剤使用により尿道の狭窄の有無を知ることもできる
  • 超音波検査:犬の下腹部の包皮わきに超音波画像検査装置のプローブをあて、前立腺を描写
   →前立腺全体の形状を把握できるとともに、前立腺実質内の大小の嚢胞を観察可能
  • 直腸検査:小型犬であれば、手袋をした指を直腸内に挿入して、直腸壁を介して前立腺を触知可能
   →前立腺の大きさや形状を知り、また、疼痛の有無や硬さから、前立腺の炎症、腫瘍の発生などの診断も可能
  • 精液検査:犬の射精精液の大部分を占める前立腺分泌液は透明水様
       血様→前立腺肥大症、前立腺嚢胞、前立腺炎を疑う
  • 穿刺吸引:エコー下で前立腺に穿刺して吸引することで、前立腺上皮細胞や嚢胞内貯留液を採取
 ※組織学的には、嚢胞の上皮は崩壊し、炎症は間質にまで及ぶ(血中の白血球数の増加を示す例)

前立腺膿瘍の治療

  • 血液ー前立腺関門の存在→血液を介した抗菌薬の腺腔内への浸透を困難に
             →脂溶性の抗菌薬および化学療法剤を選択
               (エリスロマイシン、クロラムフェニコール、オフロキサシン、エンフロキサシン、トリメトプリムなど)
  • 膿瘍の腔が大きい場合は膿液の排出を行う
    →エコー下で穿刺吸引により、膿液を排除し、内腔をポピドンヨード液や抗菌薬溶液で洗浄
  • 外科的前立腺の部分摘出術、全摘出術の実施が必要なケースもあり

前立腺膿瘍の術後管理法

  • 必要に応じて鎮痛薬の投与
  • 適切な抗生物質の投与
  • 尿または前立腺液の培養検査
  • ドレーンの管理

前立腺膿瘍の術後合併症

  • 尿失禁
  • 尿道損傷

前立腺膿瘍の予防

  • 精巣摘出術により、前立腺を委縮させると、炎症は起こりづらくなる




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