目次
犬の門脈体循環シャント
犬の門脈体循環シャントの概要
- 門脈系と全身大静脈系(大静脈or奇静脈)が異常な短絡
- 先天性と後天性(先天性が多い)
- 先天性→肝内性(大型犬)、肝外性(小型犬) ※プードルは肝内性も多くみられる
- 肝内性→胎児期の静脈管の遺残(静脈管開存症)であるため、肝臓の左区域を走行していること多い ※中央肝区域も右肝区域もある
- 肝外性→右胃静脈、脾静脈、門脈から後大静脈にシャント ※奇静脈へシャントするタイプもあり
- 後天性→肝線維症、非線維性門脈高血圧、動静脈シャント等に起因する門脈高血圧による
犬の門脈体循環シャントの臨床徴候
(3~8ヶ月齢が多いが、2~5歳で診断される症例もあり)
※シャントの程度によって症状は様々!
- 発育不良、削痩
- 被毛粗剛
- 消化器症状(間欠的な食欲不振、嘔吐、異食、肉食を避けて芋や野菜を好むなど)
- 肝性脳症(食後に多い)※行動異常、頭部下垂、沈うつ、運動失調、旋回運動、震戦、一過性盲目、ペーシング、壁伝い歩行、嗜眠、発作など
犬の門脈体循環シャントの診断
- 臨床症状
- 血液生化学検査:軽度の非再生性貧血、MCVの低下、肝酵素↑、Alb↓、BUN↓、Cho↓、TP↓、Glu↓ ※BUNの低下は尿素回路↓による
- 空腹時と食後の血清アンモニア、総胆汁酸(TBA)の検査が有用! (胆汁酸は腸肝循環で終始するもの)
- 血液凝固異常
- 尿検査:尿酸アンモニウム結晶(X線検査では視認できず)
- X線検査:小肝症
- 超音波検査:シャント血管の描出、門脈と大動脈系の比、門脈の流速など
- 造影CT検査:客観的かつであり、3次元構築すると術前情報として有用
犬の門脈体循環シャントの治療
<内科療法>
- 低蛋白食(アンモニア発生抑制のため) ※Albの値が低下しないように!
- ラクツロース、ラフィロース→アンモニア産生を抑制
- 抗菌薬
- 重度な肝性脳症の症状(沈うつ、運動失調、旋回運動、発作)→輸液やラクツロース浣腸、抗菌薬投与
<外科療法>
- 完全結紮
- 部分結紮
- セロファン・バンディング
- アメロイド・コンストリクター
- 血管内法による塞栓術
※周術期の血糖管理、観血的血圧測定!(シャント血管結紮による動脈圧↓、門脈圧↑の場合あり)
※結紮方法の選択
・仮完全結紮時の門脈圧<15mmHg:完全結紮可能
・仮完全結紮時の門脈圧>25mmHg:部分結紮→3~4ヶ月後に管内門脈枝を発達させてから完全結紮 ※門脈低形成の場合が多い
・仮完全結紮時の門脈圧<25mmHg:セロファン・バンディング、アメロイド・コンストリクター (7~10日かけて徐々に血管管外からの炎症により閉塞、緩徐なため安全)
猫の門脈体循環シャントについて
- 肝外の単一シャントが一般的
- 6ヶ月~1歳未満で症状の発症(雄猫で発生率多い)
- 雑種、ペルシャ、ヒマラヤン、アメショ、チンチラで多い
- 肝線維症に起因する門脈高血圧に続発する後天性PSSはきわめてまれ
- 間欠性流涎や発作、一次的視覚障害が犬よりも高頻度
- 血中アンモニア濃度、血清胆汁酸(SBA)
- 術後発作の発生頻度は犬より高い
【経歴】
北海道大学獣医学部卒、東京大学獣医外科研究室博士課程
米国ペンシルバニア大学 客員研究員
【所属学会・資格等】
Veterinary Cancer Society (獣医がん学会)
【得意分野】
腫瘍学、免疫学